ギターで理解するディミニッシュスケール|「全部1音半?」の誤解を解く
ディミニッシュスケールは、ジャズ・フュージョン・メタル・プログレなどで活躍する
強い緊張感(スリル)を作れるスケールです。
一方で「ディミニッシュって全部1音半(短3度)でできてるんじゃないの?」という疑問もよく出ます。
この記事では、その混同ポイントを整理しつつ、ギターでの覚え方・使いどころまでまとめて解説します。
ディミニッシュスケールとは?
ディミニッシュスケール(Diminished Scale)は、フレーズに不安定さ・妖しさ・強い引力を与えるスケールです。
「一瞬で空気を変えたい」「アドリブでスパイスを入れたい」ときに非常に有効です。
結論:ディミニッシュスケールは「全部1音半」ではない
先に結論です。
ディミニッシュスケールは、すべてが1音半(短3度)で並ぶわけではありません。
「全部1音半」の構造を持つのは、スケールではなくディミニッシュ・セブンスコード(dim7)です。
ここを分けて理解すると一気にスッキリします。
混同しやすい2つ:dim7コードとディミニッシュスケール
1) ディミニッシュ・セブンスコード(dim7)は全部1音半(短3度)dim7コードは、音を短3度(=1音半)ずつ積み上げた完全対称のコードです。
例:Cdim7
C → Eb → Gb → A → (C)
- 音程がすべて短3度
- 対称構造なので、3フレットずつ同じ形になりやすい
- ギター指板で「規則的」に見える代表格
つまり、「全部1音半」=コード(dim7)の話です。
2) ディミニッシュスケールは「全音と半音が交互」ディミニッシュスケールの基本ルールは全音(Whole)と半音(Half)が交互に並ぶことです。
種類が2つあります。
Half-Whole Diminished(半音→全音→半音→全音…)
半 → 全 → 半 → 全 → 半 → 全 → 半 → 全
例:C Half-Whole
C → Db → Eb → E → F# → G → A → Bb → C
主な使いどころはドミナント7th(C7, G7など)の上です。
Whole-Half Diminished(全音→半音→全音→半音…)
全 → 半 → 全 → 半 → 全 → 半 → 全 → 半
例:C Whole-Half
C → D → Eb → F → Gb → Ab → A → B → C
主な使いどころはディミニッシュコード(Cdim, Bdimなど)の上です。
つまり、「全音+半音の交互」=ディミニッシュ“スケール”です。
なぜ「全部1音半」に感じるのか?(誤解が生まれる理由)
「ディミニッシュスケール=全部1音半」と感じる理由は、次の関係にあります。
- ディミニッシュスケールの中にdim7コード(短3度で並ぶ音)が含まれている
- そのため、指板上で短3度対称っぽく見える瞬間が多い
例:C Half-Whole Diminished
C Db Eb E F# G A Bb
この中から、短3度で並ぶ音を抜き出すと……
C → Eb → F# → A (= Cdim7)
つまり、スケールの中に「全部1音半」のdim7コードが内包されているため、混同が起きやすいのです。
ギターで覚えるときの重要ポイント
指板上の特徴:3フレットごとに“同じように”見える
ギターでディミニッシュ系が覚えやすい理由の一つが、対称性です。
- dim7コード:完全に短3度対称 → 3フレット移動で同じ形
- ディミニッシュスケール:全音・半音交互だが、内部にdim7が含まれる → 似た規則性が見える
だからこそ、「全部1音半?」という疑問が出るのは自然です。むしろ良い観察です。
実践:どんなコードで使う?
1) ドミナント7thで使う(Half-Whole)例:G7の上で緊張感を作りたい → G Half-Whole Diminishedを使う
- 強烈な緊張感を作れる
- 次のコードへの“引力”が強くなる
例:Bdimの上 → B Whole-Half Diminished
- コードトーンを自然に含む
- 怪しさ・不安定感を狙って演出できる
アドリブで使うコツ(外れて聴こえないために)
コツ1:長く弾きすぎない(スパイス感覚)ディミニッシュは“濃い味”です。1〜2小節くらいで十分効果が出ます。
コツ2:解決先(着地)を意識する次のコードのルート / 3rd / 5thなどに着地すると「上手く聴こえやすい」です。
コツ3:速いフレーズと相性が良い規則的な構造なので、16分・レガート・シーケンスなどの速いラインにハマります。
よくある質問
Q. 難しそうで怖いです…実は形自体は規則的なので、慣れると覚えやすいです。
さらに、3フレット移動の性質があるため、移調もシンプルになります。
使えます。特にハードロック / メタル / プログレでは効果が出やすいです。
「ここ一瞬だけ怪しくする」「盛り上がりの直前でスリルを出す」などに向きます。
まとめ
- ディミニッシュスケールは「全部1音半」ではない
- 「全部1音半」なのはdim7コード(短3度で積み上げ)
- ディミニッシュスケールは全音と半音が交互(Half-Whole / Whole-Half)
- 混同する理由は、スケール内にdim7コードが含まれるため
- 実践では、ドミナント7thにHalf-Whole、dimコードにWhole-Halfが基本
この整理ができると、次は「どこで使うと外れにくいか」「どう解決するか」が一気に分かってきます。



